理念・方針
乳癌は近年増加の一途を辿り、今や女性の悪性新生物の中で第一位になりました。しかし、乳腺外科の標榜を掲げる病院はまだ多くありません。井田病院は以前より外科で乳腺疾患を扱ってきましたが、2012年5月より乳腺外科外来を独立させ、より専門的かつ最新の医療を提供できるよう環境を整備致しました。また、慶應義塾大学病院の関連施設でありますので、大学病院とも連携を取り常に先進の治療を提供しております。
乳腺外科では、良性疾患・悪性疾患にとらわれず乳腺疾患全般において診療可能な体制をとっております。外来は、婦人科外来と同じスペースを確保することにより、女性が一人でも受診しやすい環境を整えております。
検査では、県内でも設置の少ない3Dマンモグラフィー(トモシンセシス)やステレオガイド下マンモトームにも対応しておりますので、超音波では確認できないマンモグラフィーの石灰化病変も生検可能です。
また、日本乳がん検診制度管理中央機構の乳がん検診認定施設でもあり、マンモグラフィー読影認定医・乳房超音波読影認定医が常勤しております。さらに、日本乳癌学会の認定施設も取得しております。
がん拠点病院である当院としましては、乳癌領域のがん診療連携にも重点を置いております。近隣に乳腺専門施設が少ない立地を生かし、より地域に根付いた乳癌診療を行っていきたいと考えております。
対象疾患
良性疾患 | 症状 | 乳房痛、乳汁分泌、炎症 など |
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可能性のある病名 | 乳腺症、乳腺炎、乳頭異常分泌症 など | |
検査法 | マンモグラフィー、超音波、MRI、細胞診、組織診 など | |
腫瘤性病変 | 症状 | しこりを自覚、健診で指摘、皮膚のひきつれ など |
可能性のある病名 | 乳腺症、良性腫瘤、葉状腫瘍、乳癌 など | |
検査法 | マンモグラフィー、超音波、MRI、細胞診、組織診 など | |
石灰化病変 | 症状 | マンモグラフィーにて石灰化を指摘 |
可能性のある病名 | 乳腺症、良性腫瘤、葉状腫瘍、早期乳癌 など | |
検査法 | マンモグラフィー、超音波、MRI、細胞診、組織診 など | |
乳頭部異常 | 症状 | 乳頭部のただれ、出血 など |
可能性のある病名 | 皮膚疾患、パジェット病、乳癌 など | |
検査法 | マンモグラフィー、超音波、MRI、細胞診、組織診 など |
主な検査・機器など
遺伝子検査 | 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)を調べるためのBRCA検査や、抗癌剤の適応を調べるコンパニオン診断が可能です。 |
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3Dマンモグラフィー (トモシンセシス) |
通常のマンモグラフィー検査に加え、乳房の断層撮影が可能な最新器機を導入しております。 |
乳腺ダイナミック造影MRI検査 | マンモグラフィーや超音波では診断が困難な場合、造影剤を用いたMRI検査にて乳腺の詳細な情報を得ることができます。 (喘息の方は造影剤が使用できません) |
エコーガイド下吸引針生検 | 超音波にて異常を認めた場合、超音波で確認しながらマンモトームという機器を使って針生検をします。 通常の針生検と比べ、より確実に組織を採取できます。 |
ステレオガイド下吸引針生検 | マンモグラフィーにてカテゴリー3以上の石灰化を指摘された場合、マンモグラフィーで確認しながらマンモトームという機器を使って針生検をします。 |
当院で可能な手術
乳腺腫瘤切除術 | 局所麻酔下にて、良性腫瘍を日帰り手術で摘出します。 |
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乳腺腺葉区域切除術 | 乳頭異常分泌症において、乳汁分泌を来す異常乳管を同定し、その乳管を含む腺葉のみ切除する術式です。 |
センチネルリンパ節生検 | 乳癌の手術において、腋の下のリンパ節に転移があるかどうかを調べる検査です。当院では色素法とRI法の併用法で行いますので、より確実な結果を得ることができます。 |
乳房温存手術(温存術) | 乳癌の手術において、腫瘤の大きさや位置によっては乳腺を部分的に切除することで、乳頭および乳房の形状を温存することができます。(多少は乳房が変形することがあります) |
胸筋温存乳房切除術(全摘術) | 乳癌の手術において、乳頭・乳輪および乳腺を全て切除する術式です。 |
乳頭温存皮下乳腺全摘術 | 乳癌の手術において、乳頭・乳輪は温存し乳腺のみを全て切除する術式です。 |
組織拡張器による乳房形成術 | 乳房切除術後に、エキスパンダーといわれる組織拡張器を同時挿入します。後日、シリコンバック等との入れ替え術が必要になります。 |
年間症例数
乳癌症例数 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
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手術 | 総件数 | 74件 | 91件 | 114件 | 乳房部分切除術 | 58件 | 63件 | 69件 |
乳房全摘術 | 15件 | 26件 | 37件 | |
乳房再建術 | 6件 | 1件 | 3件 | |
治療 | 放射線治療 | 32件 | 61件 | 75件 |
化学療法 | 879件/558人 | 1059件/658人 | 1,219件/778人 | |
外来 | 外来受診総数 | 4,777人 | 5,352人 | 5,521人 |
紹介患者数 | 284人 | 338人 | 462人 |
在院日数
全国平均在院日数と当院の比較
全国平均在院日数と当院の比較は、以下のとおりです。
●乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部リンパ節郭清を伴わないもの)
⇒全国平均 5.8日間 →当院 4.0日間
●乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部リンパ節郭清を伴うもの)
⇒全国平均 10.3日間 →当院 4.3日間
2022年度 DPC全国統計-病院情報局調べ
「傷病別全国統計」を下記のように入力し、変更するボタンを押すと表示されます。
- 診断分類-乳房系
- 傷病名-090010 乳房の悪性腫瘍
- 表示年度-2022年