外来のご案内

毎週火曜日 午後1時30分~3時


医師紹介

藤村 知賢

役職 外科担当部長
消化器外科兼務
専門分野 外科(消化器)・胆・肝・膵
認定資格 日本外科学会 外科専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
所属学会 日本外科学会
日本消化器外科学会
日本消化器内視鏡学会
日本胆肝膵外科学会
日本内視鏡外科学会
日本癌治療学会
日本臨床外科学会
皆様へ一言  

胆石症とは

胆石症というのは、胆のうや胆管に石ができて、時に痛みなどさまざまな症状を引き起こす病気の総称です。胆汁という消化液が肝臓でつくられ、胆管を通って十二指腸に放出されます。この胆汁中に、「胆石」という石ができてしまうことがあります。この石は、胆汁が濃縮される胆のうによくできます。(胆のう結石)

胆のう結石、総胆管結石

しかし、時には胆管にできてしまうことや胆のう内にある結石が胆管に落ちてしまうこともあります。(総胆管結石)
症状や治療方針が異なりますので、ここでは胆のうにできる胆石について説明します。

どんなときにこの病気に気づくか?

突然の激しい上腹部痛(胆石発作)で気づく(急性症状)

何の前触れもなく、突然激しい上腹部痛に襲われます。ただし、よく思い出してみると、暴飲暴食とか過労が引き金になっていることや、いままでも上腹部の調子が悪かったという場合もあります。


以前から何となくお腹(上腹部)の調子が悪いというので気づく(慢性症状)

なんとなくお腹(といっても上腹部、つまり本人は「胃が悪い」という感じ方をしている場合があります)の調子が悪い、特に食後、主に脂っこいものをたべた後などに上腹部痛や吐き気、食欲不振があって受診し、発見されるということも少なくありません。

検査と診断はどのように行われるか

痛みの状況、起こった経過たとえば食事、飲酒、過労など関係があると思われる事柄、今までにも上腹部の不快感がなかったか、などを担当医師にお話しください。
当院では、腹部超音波検査・腹部CT検査(X線断層撮影)・胆管撮像(MRCP・DIC-CT・ERCの3種類のうち最低一つ)が行われます。
また、このような上腹部の症状は胃の病気と似ているため、胃炎とか胃・十二指腸潰瘍、あるいは初期の胃癌などを鑑別しなければなりません。必要に応じて上部消化管内視鏡検査(俗称:胃カメラ)を施行する場合もあります。

  • 腹部超音波検査
    超音波検査は負担が少なく、胆のうの状態や結石を直接みることができる一番簡単な方法です。ただし人によっては非常に描出しにくい方もいらっしゃいます。
  • 腹部CT検査(X線断層撮影)
    腹部CT検査(X線断層撮影)は、X線を用いて体の断層撮影をします。胆嚢周囲の状況、炎症の程度、解剖学的な情報を得ることができます。造影剤を用いると情報量がかなり増えますが、造影剤アレルギーを持っている方には使用できません。そのため造影剤について何か問題があった方は担当医にお話しください。承諾書が必要となります。
  • 胆管撮像(MRCP・DIC-CT・ERC)
    MRCPは磁気を用いて、胆管と膵管を映し出します。体内に金属が入っている人や、閉所恐怖症の人には検査できません。DIC-CTは胆管を描出するために手の静脈から造影剤を注入して、その造影剤が肝臓で代謝され胆管に存在する間にCTを用いて撮影する検査です。その情報をもとに3D構築をします。造影剤を静脈注射するので、造影剤アレルギーを持っている方には使用できません。そのため造影剤について何か問題があった方は担当医にお話しください。承諾書が必要となります。ERCは内視鏡を胆汁の出口までいれ、直接胆管を造影します。直接造影剤を注入するのでアレルギーの心配はほとんどありません。ただし、注入の際の影響で膵炎がおこることがあります。

診療行為が必要な理由

胆石発作のような激しい症状は、ともかく痛みを抑えなければなりません。鎮痛剤や胆のうの緊張をゆるめる薬剤を用います。胆嚢炎を併発している場合は、それに細菌感染が起こっているので、食事を止めたり、抗生物質が用いられたり穿刺が必要になることがあります。(穿刺について:胆嚢内が感染してしまって,強い痛みや感染がおこっている場合は、胆嚢に針を刺して胆嚢内に貯留している感染胆汁を吸引することにより症状が軽快することがあります。この手技をPTGBAと呼びます。また、刺して吸引するだけでなく、しばらく細い管を留置することがあります。この手技をPTGBDと呼びます。効果的な場合は翌日から食事が食べられる程度に改善します。
しかし、これでとりあえず痛みは治まったとしても、根本的な原因である胆石はなくなるわけではありませんから、いつ再発するかわかりません。
石をなくするという根本的な治療に踏み切るかどうかは、悪性の疾患ではないため、患者さんの考え方・社会的状況と、放っておくと胆石発作が再発、不快症状がしつこく続く、場合によると癌の危険が増す、といった医学的な状況により判断致します。ご希望等ございましたら、遠慮なく担当医にお話しください。

石があるのに症状がない「無症候性胆石」

偶然の超音波検査などで、胆のうに石が見えるのに本人には全く症状がない、という例が決して珍しくありません。
症状がなければそのまま経過をみていく、というのが当施設の考え方です。しかし、いつ症状を引き起こすかわかりませんし、石の刺激で胆のうの壁が厚くなってきたり、癌が出てきたりという危険もないとはいえませんので、超音波検査などで定期的に検査観察を続けていくことをお薦め致します。担当医にご相談ください。

治療方法

  1. 薬で石を溶かす
    胆汁の分泌量を増やし、その性質を変化させて石をとかしてしまうという狙いの薬剤が開発されています。ただ、大きな石や石の数が多い場合は特にそうですが、完全に石をなくすことは難しいです。
  2. 手術
    石のある胆のうをまるごと切除してしまうのが根治手段です。胆石は体質によりできることが多いため、石だけとってもまたできることが多いのです。そのため現在では石だけをとることはしておりません。また、症状のある人の大部分の胆嚢は正常に働いていないため、切除しても消化器系への影響はほとんどありません。
    切除の方法は開腹法と腹腔鏡下法と2通りあります。

胆石手術

手術方法

1990年以前、胆嚢摘出術は開腹手術のみでしたが、それ以降、腹腔鏡下胆嚢摘出術が普及してきました。比較的炎症が軽い場合は腹腔鏡下手技で行いますが、炎症が高度な場合は現在でも開腹手術を行っています。個々に状況がいろいろと異なりますので担当医にご相談ください。

  • 多孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術
    従来法:臍周囲を一カ所1.2cmほど切開し、腹腔内に空気を入れます。空気を入れることにより腹腔内に腹腔鏡と言うカメラ(ビデオスコープ)を挿入することで腹腔内を観察することができるようになります。この腹腔鏡でおなかの中を見ながら、 5mmほどの切開を2箇所、1mmの針穴を1箇所加え、胆嚢を摘出する手術を施行します。

手術時間は1時間から1時間半程度です。その前に全身麻酔をかけるのに1時間程度、全身麻酔から覚めるのに2時間程度かかります。炎症の程度はあくまでも術前の検査による予想ですので、実際はもっと高度な場合もあります。腹腔鏡下手術で対応できない場合は途中で開腹手術に移行する場合があります(1-2%程度)。
開腹胆嚢摘出術~従来の開腹手術ですが、以前よりも傷の大きさは遥かに小さくなっています。手術時間は2時間程度です。

当院では腹腔鏡下胆嚢摘出術・開腹胆嚢摘出術を、年間それぞれ約40例・約5例程度施行しております。

摘出した胆嚢は病理組織検査へ

摘出した胆嚢は、顕微鏡を用いて組織を観察する病理検査を施行します。結果が出るまでは。術後3週間程度かかります。2-3%の確率で摘出した胆嚢に“がん”が認められる事があります。その場合は追加の治療を施行する場合があります。より詳しい事は担当医にご相談ください。

効果

胆嚢自体を手術で摘出するため胆嚢結石が再発することはありません。しかし、胆嚢にある石が検査後から手術で胆嚢を摘出するまでに胆管に落ちてしまうことがあります。
薬で石を溶かすことや衝撃波での破砕は、効果が不十分な事も多いので,残念ながら当院ではあまり施行しておりません。

診療行為の危険性

手術を施行して胆嚢を摘出しますので、危険が全くない訳ではありません。術後起こりうる手術合併症は、“後出血”“胆汁瘻(胆嚢を胆管から切り離した断端や、胆嚢を肝臓から剥がした断端から胆汁がもれる事)”“胆管損傷”“傷の感染”です。出現の可能性はすべてあわせても5%以下です。(当院2012~2015 1%)

通常は発生しないが重大な障害とか死亡の危険性もあり得る事

手術から術後歩行開始までベットの上で寝ている事になります。その間、下肢に血栓(血の固まり)ができてしまい、それが歩き出したときに剥がれ、肺の動脈を詰まらせてしまう事がまれにあります(肺塞栓)。こうなると胸痛や呼吸困難が現れ重症になると意識消失、そして死に至る事があります(0.1%以下)。当院では全例に予防策をとっております。ご理解した上でご協力お願いします。疑問点などございましたら、主治医までご相談ください。

実施後におこり得る障害

胆嚢を摘出してしまって問題ないかという疑問を感じるかと思います。胆石があって症状がある方は、もう胆嚢があまり正常に機能していない事が多いのです。あまり正常に機能していないので、胆嚢を取っても悪影響を及ぼす事はほとんどありません。また、胆嚢を摘出しても“油物を控えなくては”とか“食生活を変えなくては”という心配はほとんどありません。むしろ症状がなくなり、食欲が旺盛になる方の方が多いので、体重増加に気をつけなければならない事もしばしばあります。

実施後の一般的経過

  • 腹腔鏡下胆嚢摘出術
    翌日に食事開始、おなかに入っている管を抜きます。この日の午前中はまだ辛いですが、午後にはだいぶ元気になる方が多いです。術後2日目から5日目までに状況に応じて退院となります(ほとんどの人は3日目に退院)。糸は溶ける糸なので抜糸の必要はありません。退院後シャワーに入っても構いません。(詳しい経過予定表は別にお配り致します。)
  • 開腹胆嚢摘出術
    2~3日後に飲水を開始します。3~5日目に食事を開始します。その後おなかに入っている管を抜きます。術後5~8日目に状況に応じて退院となります。

検査・手術費用

検査部門 腹部超音波 3割負担1,700円程度
腹部CT(造影) 3割負担10,000円程度
ERCP 3割負担6,000円程度
MRCP 3割負担7,000~円程度
DIC-CT 3割負担 7,000円程度
上部消化管内視鏡(生検なし) 3割負担5,000円程度
上部消化管内視鏡(生検あり) 3割負担10,000円程度
手術部門 腹腔鏡下胆嚢摘出術(入院費用) 3割負担145,000円程度
開腹胆嚢摘出術(入院費用) 3割負担150,000円程度

(手術に関する入院費用は食事、部屋、処置によりおおきく費用が変わります。あくまでも目安とお考えください。)

お問い合わせ

井田病院
電話:044-766-2188(代表)